キズ絆 - Scene5~ Last -
-----明転
事務所のソファには服部が座っていて、いつもの面々が揃い美麗の姿もある。
美麗は事務所の隅(ダーツ盤の所)で小顔ローラーをしている。 その様子に気付いた智子は なんかやってると言った表情で武の肩を叩き美麗の行動を教える。
仁は深妙な面持ちで腕を組みながらため息をつき事務所を歩く。(下手から上手へ)その後ろをピッタリくっつきシンクロした動きをする花岡。
ソファに座る服部を見て、またため息をつく仁
「あのさぁ、あんたなんなんだよ!」と声をあげ振り向く仁
仁が振り向いた方を一緒に見る花岡
「あんただよ!邪魔だから便所の前にでも立っててくれよ」
「オッケ〜!」
「素直だな!」
仁「あぁすいませんね」と服部に声を掛ける。
「あぁいえ、それより金山さんこれって…」と昨日受け取ったファイルに目を落とし仁に問いかける
「よく読んでもらえました?」
「ええ。でもこれじゃあ」内容に不安がある様子の服部
「大丈夫ですから!絶対この通りに実行してください」
「でも…」
「大丈夫ですから!」
そこへ隼人に連れられてなつみも事務所に入って来る。
「こんにちわ…」と弱々しく挨拶するなつみ
その声に気づいた明が「なつみ?!」と声を上げ立ち上がる
「明さん?!」なつみもびっくりし「金山さんどういう事ですか?」と詰め寄る
仁は自分が服部を呼んだ事を伝えると「なつみちゃん突然だけど今から本番だから」と言う
動揺するなつみを落ち着かせるように、明のいるソファに誘導し2人を座らせる。
事務所の真ん中に駆け寄る隼人と美麗のポーズで本番が始まる。
仁は明に腰元で小さくガッツポーズをして「がんばって」と口パク
不安げな表情を浮かべるなつみにも「なつみちゃん頑張って」と小さく声を掛ける。
隼人と美麗が持ち場につき、なつみの準備が整ったのを確認する
仁は右腕を高く上げ振り下ろし、なつみにだけ聞こえる様に優しく、パチン…と指を鳴らす。
それを合図に「明さん、開口一番こんな事を…」となつみが台本通り話し始める。
その声を遮る様に「なつみ!その前に僕の話を聞いてくれないか?」と明が言う。
どう言う事?!と言いたげに隼人と美麗が持ち場を離れ花岡もどういうことだー?!と口パクで仁に訴えかけてくる。
仁は3人を制し「いいから!」と口パクで持ち場に戻る様に指示する。
なつみもどういうことですか?と言いたげに仁の方を不安そうな顔で振り向くが少し首を傾げて苦笑いで誤魔化す。
仁は明に視線を向け、続けて と手で合図する
♪ 〜 絆
明はなつみへの気持ちを話し出す。
『なつみの気持ちも考えずに僕の独りよがりだった。僕はなつみと結婚する為だったら親に反対されようが家を出る覚悟だった。
なつみが傷ついていたら何十回でも何万回でも絆創膏を貼ってあげたいって思ってた。』
里美はこの言葉…と気付いたように 武たちもあの時の言葉…!と仁の方を見る
仁は少し気まずそうに後ろを向く。
「でもこれで気が済んだよ… 」
言葉を詰まらせた服部は不安げな顔で仁の方に視線を向ける。
それに答えるように頷く仁。明は言葉を続ける。
「なつみの気持ちを尊重するよ、別れよう」
明に背を向け顔を見られないように泣きながら話を聞いていたなつみはその言葉を聞いた瞬間、顔を上げ明の方を振り返る。
間髪入れずになつみに近づいた仁は「良かったね〜!なつみちゃん!服部さん別れたいってこれで依頼成立!」と言う
その言葉を聞いた明は「どういう事ですか?!」と声を荒げ仁に詰め寄った。
「ごめんなさい!!!!!」なつみの声が明を止める。
なつみは止まらない涙を堪えながら「明さん私……やっぱり 別れたくない!」とゆっくり、でも力強く言葉を詰まらせながらも明に自分の本当の気持ちを伝える。
「いや〜僕は全然構わないんだけど〜。服部さん依頼成立って事で…?」と言うと仁は後ろを向き2人に気づかれない様にガッツポーズをする。
一連の流れを理解し、見返した!という表情で事務所の面々が仁に視線を送る。
「なつみ、もう一度言わせてほしい。僕と結婚してくれないか?」明がもう一度なつみにプロポーズをする。
「明さん…」頷くなつみを明が抱きしめる。
かえで「お兄ちゃん?!」
智「これって…仁!!」
仁「まぁあれだろ!好きなもの同士やっぱ一緒にいれた方がなぁって。里美の言葉少しパクらせてもらっちゃった」と少し照れくさそうに喧嘩した時の言葉を明の台本に使った事に触れる
「良いわよそんなの」と答えた里美に仁は言葉を続ける。
「それとあれだ…里美さえ良かったらなんだけど…俺に、もう一度絆創膏貼ってくんないかな?」
♪〜 バンド⭐︎エイド / スキップカウズ
「今度は俺も何十回、何万回でも貼り直してやるからさ。」
「お兄ちゃん…」
「ごめんな、長いこと待たせて。」
「足りないわよ…」
「え?」
「一回じゃ足りないって言ってんの!もっと何回も…何回も謝ってよ。」
「ごめんな、里美。悪かったな。ごめんな。」と深く頭を下げる仁
「仁…」
「里美…」
抱き合おうとする2人よりも早く駆け寄ってきたかえでが「お兄ちゃん!!!!」と仁にジャンプして抱きつく
「ここはお前じゃないだろ〜」と呆れたようにつっこみ笑い合う仁、里美、かえでは嬉しさを共有するように3人で抱き合う。
----暗転
花岡にスポットが当たり隼人、美麗も照らされる
花岡「おいこれって…?」
隼人「出番…」
美麗「なし?!」
-----暗転
♪〜 毛布
事務所が薄暗く照らされる。
ソファには白い服に身を包んだ明となつみが座っている。
ふたりはどこか今までとは違った雰囲気でゆっくりと話始める。
「僕たちやっと一緒になれたね」
「そうねぇ、20年もかかっちゃったわね」
「うん。あの2人も随分世話のやける人たちだったけど一緒になれてよかった。」
「うまくいったね」
「でも本当によかった。お互い想いあっているのに一緒になれないなんて悲しいもの。」
「そうだな。そんな想いは僕達だけで充分だもんな。」
「そうねぇ」
「僕達も生きてるうちに一緒になれたらよかったのになぁ」
「そうねぇ」
「さーとみー!さーとみーー!」と仁が大きなお声で呼ぶのが聞こえて自分の部屋から事務所に入ってくる。
その声をきっかけにゆっくりとソファから立ち上がる明となつみ
仁が2人に気づく様子はない。
「ねぇ〜!さーとみー?いないのー?お腹空いたんだけどーー!さーとみー??」とキッチンの方も覗き名前を呼びながら探し続ける仁
諦めてソファに腰掛けハッピーターンに手を伸ばそうとすると
「もう〜仁〜、トイレくらいゆっくりさせなさいよ~」と服を直しながら慌てた様子でトイレから出てくる。
里美は、仁が着ていたストライプのシャツを着ていてそのシャツの裾を整えながらソファの仁に近づく。
里美も部屋にいる明となつみの姿に気づくことなく、明の隣で何事もないように仁に話し掛ける。
「そういえば仁!今月の家賃大丈夫なの?さっき大家さんから金山さんが振り込むって電話をくれてから一向にお金が振り込まれません。って電話があったけど」
「え?そんなはずないよ!」
「何言ってんのよ〜」
「だってこの前、服部さんがボンと置いてったお金で滞納してた分と家賃3ヶ月分まとめて払ったって…?!」
「なにかの間違いなんじゃないの?」
状況が飲み込めていない仁を見かねて
「もうしょうがないな〜私が何とかするわよ〜」と言う里美
服部さんの名前に触れ「あの2人一緒になれて良かったわね」と言いながら里美は仁の隣に座る
「2人のおかげで、私たちもまた一緒にいられるようになったし」と幸せそうに仁に腕を絡ませる。
「なあ、里美!俺は里美がトイレのドアをちゃんと閉めてくれればもっっっと幸せなんだけどな〜」と開きっぱなしのトイレのドアを指す
トイレのドアに視線を向け「あれは!仁がこのあと入るかなーっと思ってそのままにしてあげたんじゃない!」と反論すると「仁こそ、そこのドア開けっ放しじゃない!」と指摘する。
里美は続けて、「他にも仁は脱いだら脱ぎっぱなし〜食べたら食べっぱなし〜」と仁のだらしない点を次々あげていく。
「仁はキッチンのカップラー…
「もういいって〜」と里美の言葉を遮る仁
「あっ!それより、お腹減ったんだけど、今日は何?」
「オムライス!」
えっ?とどこか浮かない顔をする仁に
「だって仁!オムライス好きじゃない!」
「そうだけど、3日間朝昼晩オムライスはさすがに嫌いになっちゃうな〜」
そんな仁と里美のやりとりを微笑ましく静かに見ていた明となつみはお互いなにかの合図のように頷き合うと、ゆっくりと歩き出した。
なつみはトイレの中へ、明は仁の部屋のドアへとゆっくり消えていく。
ひとりでにゆっくりドアが動きだす
「「 バタン 」」
大きな音をたてトイレと仁の部屋のドアが閉まる。
その音を聞いた2人は交互にトイレのドア、部屋のドアと確認して「「え?!?!」」と声を上げると怖がり抱き合う。
♪〜 I'd Do Anything / シンプル・プラン
-----暗転
ゆっくりと窓にあかりが灯る
そこには明となつみが寄り添い合うシルエット
-----暗転
♪〜 I'd Do Anything / シンプルプラン
明転しソファから里美と仁が立ち上がりお辞儀
明となつみ
かえで
隼人と美麗
花岡
武と智子
が順番に出てきてステージに並ぶ
花岡 美麗 なつみ 明 里美 仁 かえで 隼人 智子 武
と並び「ありがとうございました」と挨拶
仁は自分の部屋のドアからはける
♪〜 バンド⭐︎エイド / スキップカウズ
カテコ
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最後までお読みいただきありがとうございました。
仁の衣装はこちらを参考にして下さい。
詳しく書けていない箇所、セリフもニュアンス表現になってしまっているところばかりですが、少しでも皆さんと共有できていたら嬉しいです。
フォロワーさんに沢山助けて頂き、備忘録としてなんとか最後まで書き残すことが出来ました。
出演者の方、劇団の方にも反応を頂き大変恐縮です🥲
沢山の方の目に留めて頂き、個人的な備忘録とは言え、よく思われない方もいらっしゃるんじゃないかなぁと不安な気持ちもありましたが温かい言葉を頂き、時間をかけて書いて良かったなと感じています。
キズ絆が私にとってこんなに思い入れのある作品になったのは脚本演出の大和さん、そして座長の龍くんを初めとする出演者、スタッフの皆様が素敵な舞台を観せて下さったからです。
本当にありがとうございました🙇🏻♀️✨
そして、お読み頂いた方と好きなシーンや、セリフなど共有出来たらうれしいのでなにかあればこちらにメッセージ頂けたら喜びます🩹(匿名ですのでお気軽に)
こちらは個人的な備忘録であり、キズ絆関連の一切の権利は劇団ノーティーボーイズ様に帰属致します。
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